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2007年8月31日 (金)

『農のある人生』

瀧井宏臣著『農のある人生-ベランダ農園から定年帰農まで』(中公新書,2007.6)を読み了えた。
今日はその内容を紹介したい。

「北海道から九州まで各地を訪ね歩き、ベランダ農園から定年帰農まで、さまざまな取り組みについて報告したルポルタージュである。」(はじめに)

第1章では東京・練馬区の「農業体験農園」が紹介されている。
農業体験農園とは、自治体やJA(農協)が農地を市民に貸し出す市民農園や、果樹のもぎ取りやイモ掘りなどを売りにしたいわゆる体験農園とは違い、「市民が農家の指導を受けながら種播きから収穫までの農作業をトータルに体験できる農園」とのこと。
市民は、野菜の栽培技術を学べ、自分で作った新鮮でおいしく安全な野菜を食べ、栽培する喜びも味わえ、畑仲間や農家との交流を深めることができる、などなど。農家は農作業の負担が減り、安定した収入も得られ、行政は従来型の市民農園より管理運営面の負担が少ないという「三方一両得」。
都市農業の存続を模索する農家のアイデアで、1996年に誕生した。練馬区では毎年1園ずつ増やしてきたが、今では都内外で同様の農園が数多く開設されている。

第2章の「クラインガルテン」は、山小屋風の建物が付いた滞在型市民農園。ドイツ語で「小さな庭」を意味し、ヨーロッパ各国で独自の発展を遂げた都市住民のための農園がモデルだ。
日本での先駆けのひとつとなった長野県四賀村(松本市に合併)の取り組みと、ガルテナー(利用者)のいきいき生活。
クラインガルテンの人気は高く、様々なタイプのものが各地に続々と造られている。

第3章の「週末農民」では、大山千枚田(千葉県鴨川市)の棚田オーナー制度、小田原市早川地区のミカンの木オーナー制度、長野県飯田市のワーキングホリデーなどが紹介されている。

第4章は「半農半X」。
「半農半X」とは、塩見直紀さんが提唱する「自分たちが食べる分だけの農に携わりながら、自分の好きなこと、個性を活かした仕事に就いて生計を立て、社会に役立っていくライフスタイル」。着想のきっかけは星川淳さん(屋久島在住)の「半農半著」という言葉だった。
「半農半ヘルパー」「半農半陶」「半農半歌手」など、様々な半農ライフがある。
「半農半Xという生き方」は20~40歳代の若い層に共感を呼び、塩見さんのメッセージを受けとめて首都圏で活動を展開するNPO法人もある。

第5章は「団塊帰農」である。
北海道の麻田信二さんは任期途中の農政担当副知事から一農民になった。「日本農業の危機を乗り切るためには一人ひとりが自覚して農業に関わっていくしかない」という主張の身をもっての実践。
季刊『増刊現代農業』(農文協)は、1998年から4回にわたって「定年帰農」「団塊帰農」を特集し、ブームに火をつけた。
NPO法人「ふるさと回帰支援センター」は「ふるさと回帰運動」を展開、地域の活性化をめざしている。
豊田市の「農ライフ創生センター」、JA甘楽富岡などの、帰農支援の取り組みもある。
「定年帰農」は成功例ばかりではない。失敗しないための「定年帰農の心得」。

第6章の「市民皆農の時代」では、一坪菜園運動から有機農業の町へと成長した宮崎県綾町、浜田広さん(リコーの元社長)が提唱する「国民皆農」などが紹介され、著者は新しいキーワードとして「市民皆農」を提起する。
今の日本社会において市民が農に関わることの意味を次のようにまとめている。
①新鮮でおいしく、安全な食べ物が食べられる
②自ら作物を作り育てる充実感や喜びを得られる
③農作業に携わることで健康になり、ストレスを解消できる
④日本の農業を支え、食糧自給率を上げることにつながる
⑤残り少ない日本の自然や景観、文化を守っていく一助になる
⑥「農縁」の構築が、地域の再生や活性化のきっかけとなる
「市民の誰もが自分の流儀で農に関わり、農の復権を」というのが著者のメッセージだ。

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